抄録
貧困アクションラボがリードする「エビデンスに基づく開発援助評価」には、少なくとも3つの起源がある。それらは、ランダム化実験デザインの是非を議論してきた評価研究の系譜、独自の発展を遂げてきた開発援助評価の系譜、そして新しく当該分野をリードし始めた経済学の系譜である。それぞれの歴史的背景および現状を論じたうえで、ランダム化実験デザインの優位性と制約に関するスクリヴェンとバナージェの考え方の比較を行う。結論は、開発援助評価において、独占的というわけにはいかないが、ランダム化実験デザインが利用できるし利用すべき余地が確かに存在すると言うことである。そしてランダム化実験デザインを適用することにより、すべてというわけにはいかないが「機能する援助」が確かに存在することが証明されてきており、今後は、効果が証明された援助活動に対してより多くの資源を投入していくことが求められていくであろう。