2013 年 13 巻 2 号 p. 37-52
国の行政機関が政策評価に取り組み始めてから11年以上が経過したが、近年、評価が十分に利用されていないことが問題視されている。「評価の利用」はその定義や概念が明確にされていないため、評価の利用の実態も十分に解明されるに至っていない。そこで本稿では、「評価の利用」概念を解明し、評価の利用を実証的に分析するための枠組みを構築することを主眼とした。参考にしたカークハートのモデルは、プログラム評価の影響が波及する経路を概念的に理解するための社会的視点のモデルである。本稿では、これに修正を加え、国の政策評価の利用を分析するための組織的視点のモデル(修正KHモデル)を構築した。このモデルを用いて国の政策評価の利用状況について試論的な分析をおこなったところ、評価の利用者は施策担当者と管理職にほぼ限られていることや、評価の用途も施策理解が主であり、意思決定等に関して評価が積極的に利用されていないこと等が示唆された。今回構築した理論モデルは、評価の利用を実証的に分析するために有効な枠組みであり、このモデルを用いた詳細な実態分析が必要である。