2015 年 15 巻 1 号 p. 41-55
非営利組織評価の領域においては、ガバナンス等に注目するプロセス評価がその主たる社会的関心を占めてきたが、政府の財政課題が深刻化する中、非営利組織が社会課題解決を担う新しいアクターとして役割の認知を得て、社会的投資収益率(Social Return on Investment, SROI)に代表される、成果実現の効率性を評価するインパクト評価手法へのニーズが議論されるようになった。
米国で発祥したSROI評価は、社会的生産性の向上への期待から、英国を中心とした欧州で研究と実践が続き、日本でも実践事例があるが、その反面異なる社会的価値に対する合意の欠如、その評価プロセスの基準の整備が途上であること等の課題も指摘される。
本稿では、こうした問題意識を踏まえ、SROI評価の手法としての特徴とその発展過程を検討し、マルチ・ステークホルダーモデルでの参加型定量評価としてのSROIが、社会的価値の合意プロセスの確立、ひいては社会的事業の生産性の向上に資する可能性について論ずる。