日本評価研究
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研究ノート
評価倫理における「評価協力者の尊重」の検討
-心理学分野の研究倫理からの示唆-
小林 信行
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2020 年 20 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

 本稿は、心理学分野の研究倫理における研究協力者への配慮を視座に、評価倫理における基本原則「人々への敬意」に関する論考を行う。そして、その論考を踏まえ、日本評価学会の「評価倫理ガイドライン」で今後反映すべき事項に関する示唆を導出する。心理学分野では、研究は実践活動よりも高リスクと見なされ、研究に先立ち倫理審査が求められる。同様に、評価協力者に著しいリスクが生じる可能性がある場合、類似する審査が望まれ、その要否の判断基準が検討課題となる。「評価倫理ガイドライン」は、評価が介入の割り付けを決定する状況を想定しないため、前記の状況でのインフォームド・コンセント、許容される統制群の設定も検討課題となる。研究倫理の「実践」から、幾つかの課題も明らかとなった。倫理審査が調査手法の選定に影響し、特定の手法を忌避する傾向が見られた。また、「理論」が提示する複数の基本原則どうしが衝突し、倫理的な判断が困難となった結果、倫理面の配慮が研究協力者の負担を重くするケースも生じている。

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