MSC(Most Significant Change)は、欧米のNGOが活用する参加型・質的評価手法であり、学習・改善目的の評価に適しているが、日本国内での活用例は少ない。本稿では、震災復興、教育、福祉と国内社会セクターにおいて実施されたMSC評価3事例を比較検討し、国内でMSCを有効活用するための参考情報を提示する。事例研究の結果、トレーナー、コーチとしての評価専門家の存在、評価目的を手法の特色に合わせて設定する、現場視点のデータ収集、データ分析の妥当性を高める工夫の必要性など、活用上の重要項目が明らかになった。また比較的容易に内在化が可能であるという、他の参加型評価手法との違いが認められた。今後国内社会セクター事業でのMSC活用が期待されるが、指導する専門家の不足や、適切なフィードバックのあり方を模索するべきという課題がある。