日本評価研究
Online ISSN : 1884-7161
Print ISSN : 1346-6151
ISSN-L : 1346-6151
プログラム評価の試み
フィリピン感染症対策分野の評価を事例として
三好 皓一平田 慈花和田 智代中澤 哉喜多 悦子
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 3 巻 1 号 p. 43-56

詳細
抄録
本論は、国際協力事業団 (JICA) によるフィリピン感染症対策分野への協力の「プログラム評価」の試みを事例として、プログラム・セオリー・マトリックス (PTM) の概念を活用したプログラム評価の有用性について考察する。プログラム評価は、基本的には、政策 (ポリシー)、施策 (プログラム)、事業 (プロジェクト) からなる一連の政策体系の評価である。しかし、日本の開発援助は形態別に実施されており、この政策、施策、事業の混在が著しく、このため、プログラム評価を行うためには、各々の事業を統合して一連の政策やプログラムの下に位置づけて評価することが必要である。
本評価では、まず、フィリピンの感染症対策分野における多様な協力形態 (スキーム) によるプロジェクト群を、疾患別に「協力プログラム・モデル」として捉え、PTMの枠組みの中に、各事業の最終成果、中間成果、結果、活動、投入を位置づけ、擬似的な政策体系にまとめることで、プログラム評価の対象を明確にした。その上で、プロジェクト関係者の政策体系に係る認識をプロセス評価として分析するとともに、協力予算の投入分析とインパクト評価、また、個別事業の実績評価を通じて、日本の同分野への協力・介入の意味づけを行った。その結果、(1) PTMの枠組みがプログラム評価の基盤を提供すること、また、(2) プログラム評価を行うことによって、従来のプロジェクト評価では議論し得なかった政策や施策に関わる我が国の協力・介入の課題も明示することが可能となった。
著者関連情報
© 日本評価学会
前の記事 次の記事
feedback
Top