2006 年 6 巻 1 号 p. 21-29
刑事司法分野、とりわけ、非行の予防・処遇については、RCT (ランダム化比較試験) や擬似実験、それらに基づくSR (系統的レビュー) が行われ、エビデンスが蓄積されてきた。そこで課題となるのが、蓄積されたエビデンスをいかに活用するかである。本稿では、アメリカ合衆国において、非行の予防・処遇に係るエビデンスの活用のために提示されている2つの手法-[手法1: 特定のプログラムについてRCTやSRによって効果検証を行って有効性を判定し、無効な (あるいは有害な) プログラムを実務から退却させる一方、有効なプログラムの定着を図るという手法] 及び [手法2: 非行予防・処遇全般に関するSRを行い、「有効なプログラム」に関する原則を抽出し、この原則を踏まえたサービスを提供するという手法] 一について概観しつつ、エビデンスをわが国のコンテキストに適用するという観点からいずれの手法が適しているかを検討した。その結果、手法2については、(1) プログラムの頑健さを要求しない、(2) わが国の実務を否定するのではなく改善する形で利用できるという利点があり、よって、わが国においてはエビデンスの活用を行うには、手法2によることが現実的であると結論する。