抄録
評価は意思決定や問題解決に資するための戦略的な活動であり、その利用の実態を探ることは学術的にも政策的にも重要な意義を持つ。しかし評価の利用の仕方については様々な見解があり、研究者によって分類や定義がまちまちである。また、日本では理論的・実証的な利用研究がほとんどおこなわれていない。そこで、本稿では利用研究の歴史的背景を振り返り、「利用」という用語について類義語と比較しながら議論した。そして評価の利用という概念に理論的基礎を与える目的で既往文献を広く整理・分析し、利用過程 (利用者主導/評価者主導、具体的/抽象的)、利用対象 (評価結果/評価の過程) および利用目的 (実質的/象徴的) という包括的観点から利用を6つのモードに理論的に分類した。古典的な類型化から離れ、評価の政治化の議論や政策研究からの知見の再評価をおこなうことで、評価の利用における実質性と政治性への平等な視座を獲得した。