抄録
本稿の目的は,高齢化の進む大阪市中心部で地域密着型の事業を展開する介護系NPO法人フェリスモンテの活動を紹介するとともに,その実践の経験に基づいて,介護サービス利用をめぐる要介護高齢者とその家族の関係を考察することである。一般的には,高齢者とその家族との間に良好な関係が結ばれている場合に良好なサービス利用が促進されやすいものの,NPOスタッフと高齢者とのかかわりのなかで家族関係が良好な方向に再構築される場合もある。地域に密着した介護事業の展開においては,家族関係を代替する方向ではなく,高齢者の介護をめぐって家族と地域の新しい関係を築いていくことが求められている。実践と研究の交流を通じてそうした関係づくりのための知見が深められることが期待される。