家族社会学研究
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喪主選定にみる「家」
—毎日新聞と14県紙「訃報」欄からの考察—
金沢 佳子
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2012 年 24 巻 2 号 p. 177-188

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抄録

高齢男性の葬儀における喪主は配偶者か長男か,新聞の訃報欄にみる喪主身分は家族の在りようを分析するメルクマールとなる.本稿では,2007年の地方新聞を中心に,75歳以上で逝去された男性の喪主身分に照射した考察を報告する.「毎日新聞」訃報欄調査では妻喪主が優位にあったが,物故者の多くは都会に住む著名人であった.そこで,市井の人々も同様なのかと,14の県紙を抽出して調べたところ,妻喪主が1位となったのは,日本列島全体では九州西南部のみであり,大勢は長男喪主であって,約65%を占めた.
家族社会学において,日本の家族は,1950年代後半から夫婦家族理念の浸透によって,直系家族制から夫婦家族制へ移行したととらえられてきた.だが,本調査をみるかぎり,直系家族制が半世紀以上にわたって「意識されない制度」として志向されており,葬礼は「家」パラダイムの下で執り行われている.

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© 2012 日本家族社会学会
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