家族社会学研究
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特集 人口減少社会における家族と地域のゆくえ
地域ブロック内における出生率の違い――富山と福井の比較から――
中村 真由美
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キーワード: 出生率, 地域差, 北陸
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2016 年 28 巻 1 号 p. 26-42

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抄録

出生率の地域差の原因とされる社会経済的要因は富山県と福井県で似ているが,出生率には違いがある.そのため,個票データ等を用いてその理由を探索的に検証した.福井県では祖父母からの子育て支援の多さ,地域の子育てのしやすさ,地域の経済展望の明るさが突出していた.祖父母の子育て支援の規定要因を検証すると,居住状況や妻の就労状況以外に,祖父母の価値観が影響していた.地域の子育てのしやすさの規定要因の分析では,居住状況,価値観に加えて,子どもの世話をする人の数や,地域の経済展望が影響していた.地域の経済展望は地方税収と強い相関があり,福井県の明るい経済展望は原発と関連産業による潤沢な地方税収に支えられていた.最後に,女性の初婚年齢の規定要因として,大学等進学率よりも高校卒業時の就職率が重要であることを示した.富山県では,高校卒業時の女子の就職率が低いことが,女性の初婚年齢の遅さにつながっている.

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© 2016 日本家族社会学会
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