家族社会学研究
Online ISSN : 1883-9290
Print ISSN : 0916-328X
ISSN-L : 0916-328X
投稿論文
子どもの存在が伝統化した家事分担の適正評価に与える影響――要因配置実験を用いた経験的検証――
尾藤 央延
著者情報
ジャーナル 認証あり

2024 年 36 巻 1 号 p. 33-44

詳細
抄録

出産後の女性により多くの家事が偏ってしまう現象は,家事分担の伝統化と呼ばれ,育児期間を通じて安定的であることが知られている.本稿は,伝統化した家事分担が持続するメカニズムとして家事分担の適正評価に注目し,なぜ伝統化した家事分担が正当なものとみなされるのかを検討した.衡平理論・ジェンダー規範理論・分配的正義理論を用いて,子どもの存在が不平等な家事分担と家事分担の適正評価との関連に影響を与えるメカニズムに関する仮説を導出し,ドイツで実施された要因配置実験を用いて検証した.分析結果は,子どもなしの条件に比べ,子どもありの条件では適正評価が女性の家事分担割合の影響を受けづらいことを示していた.この結果は,子どもの存在がジェンダー規範を活性化し,伝統化した家事分担を正当なものとして受け入れることで,不平等な家事分担が持続するという1つのメカニズムを示唆している.

著者関連情報
© 2024 日本家族社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top