家族社会学研究
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巻頭エッセイ
投稿論文
  • 勝又 栄政
    2024 年 36 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
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    本稿の目的は,自助グループに参加経験のないトランスジェンダー男性の子を持つ父親が,子をどのように「受け容れ」ているのか,父親の主観的経験から明らかにすることである.性的マイノリティの親に着目した研究では,主に自助グループに参加経験のある親(特に母親)に焦点が当てられ,異性愛/ジェンダー規範が子の「受け容れ」に影響すると示されてきた.そのため親は子を「受け容れ」る際,性の多様性概念に関する情報に触れ認識を変容させる“規範解体型の「受け容れ」”が多く見られる.しかし,本調査の結果,「経済的自立」や「女性の所有」などの既存の規範を利用して子を理解する“規範機能型の「受け容れ」”が析出された.また,本調査の父親は,娘/息子両方の性質を認識したまま子と関係を継続しており,シスジェンダーの父子関係とは違う関係性が明らかとなった.以上の結果から,性の多様性概念を知る以外に,父子関係が継続できる可能性と危険性が示唆された.

  • 若狹 優, 粕谷 圭佑, 永田 夏来
    2024 年 36 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,子育て支援の活動が育児不安に関する悩みの解決にいかに寄与しているのかを明らかにし,それが母親たちの母親役割の抑圧からの「離脱」にどのように役立っているのか考察することを目的としている.上述の目的のために,事例としてオンライン子育て支援の活動を取りあげ,相互行為分析を通じて,その活動で何が行われているか検討している.その結果,オンライン子育て支援の現場では「わが子の報告」と報告の「格上げ」が行われていることが明らかとなった.この一連のやりとりを通じて母親は親子間の相互行為で用いることができる「母親」以外の新たなカテゴリー,「観察者」を獲得する.これによって,母親は親子間の相互行為を安定的に行うことができるようになる.同時に,複数の役割の取得は「役割距離」を可能にし,母親たちは家族生活からの一時的な離脱ではなく,家族生活のなかで「母親」という役割の圧力から「離脱」できると結論づけた.

  • 尾藤 央延
    2024 年 36 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

    出産後の女性により多くの家事が偏ってしまう現象は,家事分担の伝統化と呼ばれ,育児期間を通じて安定的であることが知られている.本稿は,伝統化した家事分担が持続するメカニズムとして家事分担の適正評価に注目し,なぜ伝統化した家事分担が正当なものとみなされるのかを検討した.衡平理論・ジェンダー規範理論・分配的正義理論を用いて,子どもの存在が不平等な家事分担と家事分担の適正評価との関連に影響を与えるメカニズムに関する仮説を導出し,ドイツで実施された要因配置実験を用いて検証した.分析結果は,子どもなしの条件に比べ,子どもありの条件では適正評価が女性の家事分担割合の影響を受けづらいことを示していた.この結果は,子どもの存在がジェンダー規範を活性化し,伝統化した家事分担を正当なものとして受け入れることで,不平等な家事分担が持続するという1つのメカニズムを示唆している.

  • 野崎 祐人
    2024 年 36 巻 1 号 p. 45-58
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

    家族の社会史研究は,原家族のなかで実親によって養育されない子どもを公的に保護し養育する「代替養育」の歴史において,養育の環境が「家庭」に近いことが規範化されてきたことを明らかにしてきた.そうした研究において,「家庭」規範を相対化した特異な代替養育言説として位置づけられているのが,1960~90年代にかけて積惟勝を中心とする全国養護問題研究会(養問研)によって提唱された「集団主義養護論」であった.しかし,集団主義養護論は本当に「家庭」規範と対立していたのか.本稿では,積や養問研の史料を網羅的に収集し,集団主義養護論と「家庭」概念の関係性を歴史的に跡づけた.その結果,集団主義養護論は戦前期や1960~70年代の日本の「現実の『家庭』」を批判していた一方で,規範としての「本当の『家庭』」の重要性は認めていたこと,施設集団と「理想の家庭」を重ね合わせて理論化しようとするものであったことが明らかになった.

特集 若者の地方暮らしから考える新時代の家族
  • 永田 夏来, 荒牧 草平
    2024 年 36 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

    本シンポジウムは,地方で暮らす若者を通して新時代の家族を取り巻く新しい状況について理解を深めることを目的に企画された.阿部真大氏と轡田竜蔵氏は地方における「新しい公共性」や「新しい働き方」を示し,人口減少に適応した社会設計を行うことで生活の質が必ずしも悪化しない可能性が考慮できると論じた.ただしこれらの変化が伝統的な性別役割分業の解体や家族構造の変化に直結しているとはいえない点に留意が必要である.両氏の議論は機会を求めて都市へ移動する若者を前提とした研究者側のモデルを解体するものであり,高度経済成長期においてみられた人口移動を前提とした社会モデルについて再考をうながすという視点も持ち合わせている.このような問題意識は「戦後型家族モデル」をめぐる家族社会学の論点と重なるものである.

  • 阿部 真大
    2024 年 36 巻 1 号 p. 64-72
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,地方において形成されつつある「新しい公共」,「新しい働き方」について見た後,それが家族の変容を伴うものなのか考える.2000年代以降,急速に進む地方のモータライゼーションとインターネット社会化の進行は,地域のコミュニティを空洞化させ,若者たちの将来不安を強めた.その結果,旧来の地縁的なコミュニティとは異なる「新しい公共」への期待が高まっており,それを担うローカルなフィールドで活躍するクリエイティブ層=ローカルクリエイティブに注目が集まっている.彼らは脱–組織人的な「新しい働き方」を実践しており,今後,彼らの「サブカルチャー」がローカルな文化を代替していく可能性は高い.しかし,そのことが家族の変容を伴うとは限らない.本稿では最後に,近代家族的な性別役割分業の解体へとローカルクリエイティブたちの文化が向かうか否かを検討する.鍵になるのは,産業構造と働き方の変化とグローバルな人権意識の向上である.

  • 轡田 竜蔵
    2024 年 36 巻 1 号 p. 73-88
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

    地方は,人口減少にともない「スポンジ化」が進んでおり,それに合わせて,新しい暮らし・仕事・公共性のあり方が模索される「逆フロンティア」である.そこでは,居住歴の多様化やIT技術の発展等にともない,「居住する地域」の範囲よりも広域的な「移動する地域」の枠組みが重要になっている.この状況を筆者はポストアーバン化時代とよんでいる.本稿では,ポストアーバン化時代の地方暮らしが,若い現役世代においてどのように認識されているのかについて,筆者が関わった調査データから考察する.人口減少が進む地域では,「移動する地域」を生きるUターン層や転入者の比率が高くなっており,こうした層が新たな地域の公共性の担い手になっている.ただし,移動の乏しい層との意識の違いは大きい.また,「移動する地域」の公共性が「居住する地域」の公共性をアップデートしたものなのか,単なる地域の広域化に過ぎないのかについても検討を必要とする.

  • 久保田 裕之, 田渕 六郎
    2024 年 36 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり
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