家族社会学研究
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近世農村における世帯の永続性
歴史人口学的分析
平井 晶子
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2003 年 15 巻 1 号 p. 7-16

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抄録

「家」とは, 世代を超えて永続し, 直系親族により単独相続され, 家業や家産が維持され, 構造的には直系家族世帯を形成するものと定義される。しかし, 庶民層で「家」が一般化した時期については未だ定説が確立していない。本稿では「家」に不可欠な要素である永続性に着目し, 実態としての世帯に永続性が備わっているのかどうかを, 歴史人口学的方法を用いて検討した。その結果, 永続性は不変的に存在したのではなく19世紀以降に一般化したこと, さらに永続性が一般化する前は永続性規範も希薄であったとの仮説を得た。これらの知見は, 17世紀初頭から「家」が存在したとする従来の家族社会学的家変動論や近代になりようやく「家」が成立したとする法制史的家変動論に再考を迫るものであり, 近世から近代への連続性において家の変動を捉える枠組みを提示するものである。

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