2004 年 16 巻 1 号 p. 32-40
家族危機において意志決定の統一体として捉えられがちであった集団としての家族を, 母親という個人の視点から検討する。本研究の目的は, 母親が親の会で学習することによって, わが子の「不登校」にいかに対処し, 夫との関係性をどう意味づけるのか, その過程を通して家族内の関係性を明らかにすることである。その結果, 母親たちは親の会へ参加することを通して, 「不登校」とは過度に競争を強いる社会や今日の教育制度への異議申し立てであると学習し, 否定的子ども観から肯定的子ども観への転換を行っていた。また, 夫がわが子の「不登校」を肯定的に捉えるか否かによって, 夫との関係性を肯定的に捉える傾向と否定的に捉える傾向が明らかになった。そして, これらの関係性の変容と同時に, 母親たちは反省的に過去の生き方を振り返り, 新たな「自立」への道を模索している。