2007 年 18 巻 2 号 p. 92-102
本論では全国無作為抽出代表サンプル調査によって得られた調査研究結果の分析を通じて, 家族社会学的研究からDV議論になにがフィードバックできるかを論ずる。問題解決志向性という観点からは一種の臨床家族社会学的研究ともみなせるが, より一般的には運動論や政策論と学術研究の関連性を問う性質をあわせもつ。暴力被害・加害経験の分析結果は非対称性仮説を支持せず, 世代間連鎖仮説をほぼ支持するものであった。これらの結果について, 暴力の深刻性, DV定義の外延的拡大パラドクス, 対称サンプルの差異などの観点から考察が加えられ, 学術研究および対策・政策論の双方において「市民的暴力」と「家父長支配的暴力」の類型区分の重要性が指摘された。