2004 年 34 巻 1 号 p. 1-11
ピアノ演奏における熟達者と非熟達者の相違を調べるため, 平易なピアノ曲を演奏楽曲として用い, その演奏から得られたMIDIデータをもとに両者の演奏傾向の定量的な比較を行った。その結果, フレーズ表現におけるダイナミクス, 旋律と伴奏の音量バランス, 楽曲終結部分におけるリタルダンドの有無, レガートにおける連続した音同士の重なり方などの点において両者の間に相違が観察された。さらにこれらが聴取者の演奏評価にどのように影響するのかと調べるために, 両者のデータを反映した演奏を作成して聴取実験を行ったところ, このような非熟達者の演奏の特徴が聴き手の演奏評価に否定的に作用している可能性が示された。