音楽教育学
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研究報告
職業的音楽家に向けての課題
―音楽家を目指してきた若者の語りから―
武知 優子森永 康子
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2010 年 40 巻 2 号 p. 13-24

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抄録

 本研究では, 職業的音楽家を志してきた若い成人を対象に, その過程にはどのような課題があったのかを, 質的に検討することを目的とした。主に学校卒業以降の困難や葛藤の詳細に焦点をあて, インタビュー調査から得られたデータの分析をおこなった。その結果, 6つの課題が抽出された。学校卒業時には, 仕事内容や仕事の獲得方法など, 職業としての音楽についての知識や情報が不足しており, このことは職業生活への移行を漠然とさせていた。仕事を始めてからも, 志の揺らぎや, 否定的な評価を受けるといった困難が認められた。ある程度音楽の仕事が増加してきても, 音楽以外の仕事とかけもちすることによるアイデンティティの葛藤や, 音楽的充実感と収入をはかりにかけるといった葛藤が認められた。また, 職業的音楽家として自立した生活を送りつつある協力者であっても, 音楽の仕事を継続した将来を展望することは難しく, 音楽を志す若者の人生設計が, 大変不確実なものであることがうかがえた。

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© 2010 日本音楽教育学会
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