音楽に併せて打つ手拍子の打拍記録を解析し, 3歳児・4歳児・5歳児における拍知覚の発達を検討した。刺激はピアノによる《きらきら星変奏曲ハ長調k. 265》 (モーツァルト作曲) の生演奏である。手拍子は音楽リズム反応記録装置を用いてリアルタイムに記録した。それを, 拍への反応の度合いを示す同期率, 被験者間の時間的まとまりを示す同期度, 1拍あたりの手拍子数から検討した。その結果, 同期率は加齢に伴って高くなった。同期度は3-4歳児間ではあまり変わらず, 4-5歳児間で高くなった。1拍あたりの手拍子数は5歳児の変奏間分散が最も小さく, 16分音符による音価の連続箇所で4歳児から間隔の狭い手拍子が認められた。幼児期における拍知覚は, 速い拍の供給が解発刺激となる興奮化や旋律等への中心化を経て, 階層的な拍節構造の理解へと進んでいくことが示唆された。この認知的発達は4歳児から5歳児にかけて急速に進むことが明らかになった。