音楽教育学
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研究報告
吹奏楽経験者の演奏活動と演奏会来場に関する量的分析の試み
─ 吹奏楽経験者への調査を通して ─
山口 恭正
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2023 年 53 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

 日本の音楽文化において, 部活動としての吹奏楽は音楽活動の間口の一つとして大きな役割が期待されている。本研究は, 将来のアマチュア演奏家や演奏会の潜在顧客となる音楽愛好家の育成への, 部活動としての吹奏楽の貢献や可能性を検討することを目的とした。調査では吹奏楽経験者を対象に, 吹奏楽部在籍時の活動状況, 卒業後の楽器演奏活動の有無, そしてプロやアマチュア楽団の演奏会への来場頻度と来場動機について質問紙調査を行った。調査の結果, 中学校で吹奏楽部に所属していた回答者の73%が卒業後に吹奏楽から離れており, また, 全体の78%が現在演奏活動から離れていた。演奏会への来場頻度は全体として低く, 時間や地理的要因といった外的な阻害要因の影響が示唆された。本研究はサンプル数等の特性から記述統計的な探索的調査にとどまっているが, 吹奏楽に関するさらなる実証研究の必要性および, アマチュア音楽家創出の重要性を指摘した。

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© 2023 日本音楽教育学会
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