労働人口の減少を補うために提唱され,新型コロナウイルス感染症の拡大のために急速に推し進められた働き方改革のターゲットアイテムは日本文化に深く根ざしている.改革を進めるためには日本社会や企業の文化的風土,労働者と企業との関係性,さらにはコミュニケーション様式など深いレベルでの考察を十分に行い,それらを踏まえた上での推進を図ることが極めて重要である.日本が今後目指すべき職場の在り方として,日本的文化と欧米的文化の適切なバランス,融合が重要であり,そのためには,企業,労働者,精神科主治医,そして産業保健スタッフそれぞれの立場において様々な課題がある.産業保健スタッフには人間関係を含む職場環境改善,多様な労働者を活かすための支援が求められる.このような理念を進めていくためのキーワードは「一人ひとりを活かす」ことであり,一人ひとりを活かすための支援が今後求められる職場メンタルヘルス支援活動と考える.