2024 年 32 巻 2 号 p. 229-237
うつ病では認知機能障害が認められ,寛解後も十分な改善がみられないと言われている.本研究では,従来のリワークプログラムに,認知機能障害の回復を目的とする認知リハビリテーションの技法を取り入れ,実践と評価を行った.認知リハビリテーションは,文章の要約,各自行うPCを用いた脳トレゲーム,グループで話し合うブリッジングセッションで構成された.参加者は,精神科クリニックに通院中で,うつ状態により休職した患者37名であった.プログラムの前後で質問紙検査と認知機能検査を実施し,統計的に分析した.t検定の結果,すべての質問紙検査において0.1%水準で有意な改善がみられた.認知機能検査の結果から,一部の実行機能,ワーキングメモリー,反応抑制,精神運動速度に改善がみられた.リワークプログラム参加者を対象とした認知リハビリテーションにおいては,参加者が飽きない工夫と,動機づけの維持が重要と考えられた.