2024 年 32 巻 4 号 p. 327-333
LGBTQ+労動者の包摂はディーセント・ワークの推進という全ての労動者の人権に関わる問題であるが,政治的な動機,あるいは特定のイデオロギーに根ざした活動のように捉えられる傾向が少なくない.産業保健の観点でも,異性愛規範やシスジェンダー規範に当てはまらない労働者が職場で排除される社会構造は職場における心理社会的ハザードの1つであり,これが離職率の増加,さらには経済的不安定やメンタルヘルスの不調の増加等という社会・健康格差の問題に繋がっていると捉えることが出来る.本稿では海外におけるLGBTQ+労動者の包摂に向けた取組について,国際機関での議論,米国における雇用差別禁止の法整備,米国企業の取組に対する認証制度を中心に取り上げる.また,これらの大きな枠組みの中で産業保健職が果たすべき役割について議論する.