本稿では,職場における孤独による健康への影響を検討した文献レビュー,および日本人労働者を対象に実施された職場における孤独と精神健康・生産性・離職への影響を検討した横断・縦断研究を紹介した.その結果,国内外の先行研究では,総じて職場における孤独は燃え尽きや生産性の低下,心理的苦痛,離職リスクと正の関連を示すことが明らかになった.一方で,因果関係や身体健康への影響は未解明であり,メカニズムを明らかにする研究や,縦断的な実証研究の必要性が示唆された.職場における孤立は,さまざまな文脈で定義される複数の状況を包含する概念として提案されるなど学問的な整理の途上にあると考えられたが,健康への負の影響が示唆されていた.新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て,多様化した新しい働き方の中で,孤独や孤立を多面的に検討し,健康影響を検討する今後の研究が必要であると考えられた.