2025 年 33 巻 3 号 p. 174-178
近年,労働者の価値観が多様化し,時間や場所に制限されない働き方も浸透しつつある.こうした変化は,人間関係やコミュニケーションの希薄化を通じて孤立・孤独につながりやすい状況を作り出す.本稿では,職場における孤立・孤独のリスクと関連する組織要因を解明し,評価指標を開発する取り組みを紹介した.最初に,孤独の測定方法(直接項目と間接項目)とその長所・短所について概説した.次に,筆者らが新しく開発した仕事における孤独感尺度(SLAW-3, SLAW-1)の開発過程とその信頼性と妥当性の概要を紹介した.最後に,孤独感と関連する組織要因の探索と,その結果にもとづく孤独リスク予測チャートの作成過程を紹介した.わが国では,従業員の約8%が恒常的に孤独を感じており,孤独対策は職場のメンタルヘルスにおける新しい課題となりつつある.今後,職場の孤独対策の実装が期待される.