2025 年 33 巻 3 号 p. 185-190
本稿では,職場における孤立・孤独の予防を目的とした組織介入の試みとして,アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)を用いた実践とその意義を報告する.AIは,組織の強みや理想の姿に焦点を当て,対話を通じて職場の「つながり」や信頼関係を再構築するアプローチである.2023~2024年にかけて,2事業所にて試行的にAIを用いたワークショップを実施し,参加者の孤立感・孤独感の改善は確認できなかったが,主観的には職場の雰囲気や関係性に肯定的な変化が見られた.孤立・孤独を意識させないようなテーマ設定や言葉遣いの工夫により参加のハードルを下げ,対話を通じて職場文化の変容を促進した.一方で,組織的なコミットメントや継続的な体制構築の必要性も課題として浮かび上がった.AIは,孤立・孤独に対する包括的なアプローチとして有効であることが示唆され,今後は多様な職場への応用と実践モデルの精緻化が期待される.