抄録
口腔扁平苔癬は原因不明の慢性炎症性粘膜疾患である。この疾患と歯科金属修復物の関連性については数多くの研究がなされてきた。本研究では金属修復物としてアマルガム, インレー, クラウンと口腔扁平苔癬および口腔扁平苔癬様病変の関連性について検討を行った。アマルガム, インレー, クラウンのうち, アマルガム充填患者が有する病変におけるアマルガムに近接した病変が占める割合は最も高かった。クラウン装着患者が有する病変におけるクラウンに近接した病変が占める割合は, インレーの場合よりも高かった。アマルガム, クラウンに近接した病変では病理組織学的特徴として, 上皮細胞間隙が拡大する spongiosis が認められた。金属修復物に近接した扁平苔癬および扁平苔癬様病変の中には, 金属に対する局所的アレルギー反応の関与するものが存在すると考えられた。