難治性の口腔粘膜病変に対する治療法はいずれも対症療法であり, その効果は満足のいくものではない。一方, 近年多数の細胞成長因子が大量に生産されるようになり, それらのなかには創傷治癒促進作用や細胞を傷害から保護する作用をもつものがあることが知られてきた。特に, 治癒が遅延した状態でより効果が発揮されるとの報告が多い。そこでこれら細胞成長因子を難治性の口腔粘膜病変に応用することにより, 新しい治療法が開発できるのではないかと考え, 細胞成長因子の効果を判定するための治癒遅延モデルの確立を試みた。ウサギの唇側歯肉に, 酢酸か水酸化ナトリウムの化学的損傷にて均一な潰瘍を形成した。潰瘍形成前に顎下腺摘出や抗癌剤の静注の処理を施すと, 酢酸で形成した潰瘍の治癒は正常状態に比較して遅延した。したがって, これらの潰瘍は難治性口腔粘膜病変モデルとして, 有用であることが明らかとなった。