抄録
両側顎下腺に生じた線維素性唾液管炎の1例を報告する。患者は40歳の女性で両側顎下腺の再発性腫脹を主訴に当科受診した。症状は約5年前からみられた。両側顎下腺はび漫性に腫脹しており, 弾性硬であった。顎下腺管開口部もび漫性に腫脹していた。両側顎下腺からの唾液分泌低下はみられなかった。顎下腺造影では主管の拡張がみられたが, 唾石は認めなかった。唾液腺シンチグラフィーでは顎下腺機能のわずかな低下を認めた。開口部より白色索状塊状物が排泄されると顎下腺の腫脹は消退した。血液検査では好酸球数とIgE値が高値を示した。アレルギー検査では数種のアレルゲンに対して陽性を示した。索状塊状物は病理組織学的に多数の好酸球の浸潤と上皮の残遺物が確認された。以上の所見は線維素性唾液管炎に一致するものであった。治療として塩酸プロムヘキシンを投与したところ著しい症状の改善がみられた。