抄録
目的:国際頭痛分類第3版beta版(以下ICHD-3β)では,三叉神経痛(13.1)は,典型的三叉神経痛(13.1.1)と,従来,症候性三叉神経痛とされた有痛性三叉神経ニューロパチー(13.1.2)に分類される.今回われわれは,口腔顔面痛外来における三叉神経痛の臨床統計を行い,その特徴を検討することとした.
方法:慶應義塾大学病院歯科・口腔外科,川崎市立井田病院,日野市立病院の口腔顔面痛外来において,三叉神経痛の患者69例の各病態の割合,治療結果等についてレトロスペクティブな検討を行った.
結果:各病態の割合は,有痛性三叉神経ニューロパチーの下位分類である外傷後有痛性三叉神経ニューロパチー(13.1.2.3)が51%でもっとも多かった.ついで典型的三叉神経痛(13.1.1)の純粋発作性(13.1.1.1)が28%,持続性顔面痛を伴うもの(13.1.1.2)が6%であった.また,外傷の原因の66%は抜歯であった.治療は,外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーでは,おもにプレガバリンが使用され51%に改善を認めた.典型的三叉神経痛はおもにカルバマゼピンが使用され,純粋発作性は63%,持続性顔面痛を伴うものは25%に改善が認められた.
結論:口腔顔面痛外来における三叉神経痛の病態ごとの経過の特徴や薬物療法の有効性には差があることが明らかになった.