日本口腔顔面痛学会雑誌
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原著論文
舌侵害刺激が視床下部-下垂体-副腎系を介した内分泌反応に及ぼす影響
片浦 貴俊杉本 是明飯久保 正弘庄司 憲明
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2019 年 12 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
目的:痛みは歯科臨床において頻繁に遭遇する身体的ストレスであるが,視床下部‐下垂体‐副腎系を介した内分泌反応に及ぼす影響については未だ不明な点も多い.本研究では,舌へのcapsaicin刺激が視床下部‐下垂体‐副腎系に及ぼす影響について,血漿ACTHおよびコルチコステロンとストレス応答ホルモンであるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)のへテロ核RNAおよびmRNA発現を指標として検討した.
方法:実験動物は,9〜10週齢の雄性Wistar系ラット54匹を用いた.吸入麻酔により非動化後,舌尖部左側にcapsaicin溶液(capsaicin群)またはその溶媒のみ(vehicle群)を注射した.注入5,15,30および60分後(各n=6)に断頭後,躯幹(体幹)血液と視床下部室傍核を採取した.また注射および吸入麻酔の無いコントロール群(n=6)も設定した.血漿ACTHおよびコルチコステロン濃度はECLIA法およびEIA法により測定し,CRH hnRNAおよびmRNA発現量はreal time PCR法にて定量した.
結果:capsaicin注入30分後において,血漿ACTHはvehicle注入30分後群に比べて有意に上昇した.また,capsaicin注入60分後において,血漿コルチコステロンはvehicle注入60分後群に比べて有意に上昇した.視床下部のCRH hnRNA発現はcapsaicin注入後15分で3.2倍に増加した.一方,CRH mRNAはcapsaicin注入後60分で2.6倍に増加した.
結論:舌へのcapsaicin刺激は,CRH遺伝子発現を介し,視床下部‐下垂体‐副腎系を活性化することが示された.
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© 2019 日本口腔顔面痛学会
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