抄録
目的:日本大学松戸歯学部付属病院を紹介にて受診した患者の中で,紹介元で原因不明とされたが,実際の診断が歯原性疾患であった症例(特に臨床診断が歯髄炎)について検討を行った.
方法:2016年1月〜2018年12月までの3年間,紹介内容が「原因不明」であった患者(原因不明患者)を調査対象とした.
結果:調査期間中に受診した患者は13,152名,紹介患者数2,147名で,そのうち原因不明患者は287名であり,原因不明患者の主訴は76.3%が口腔顔面痛であった.原因不明患者は総患者,紹介患者に比べ有意に女性が多かったが,年齢分布に特徴は認めなかった.原因不明患者のうち原疾患が,歯原性疾患と診断された症例は107例で,歯髄炎が32例で最も多かった.歯髄炎の診断に至らなかった原因として,歯冠修復物直下(5例)もしくは補綴物内部(2例)のう蝕が7例,深在う蝕の処置後の歯髄炎が6例,歯根破折が5例などであった.また非歯原性疾患と診断されたのは131例で,最も多かったのが顎関節症29例,次いで舌痛症25例,神経障害性疼痛10例であった.
結論:原因不明で紹介された患者の40%以上が歯原性疾患であった.痛みの原因が歯原性疾患であれば苦痛を早期に除去できる可能性が高く,口腔顔面痛の診断においては,まず歯原性疾患を確実に鑑別することの重要性が再確認された.