抄録
症例の概要:患者は76歳の女性.当科初診2週間前に右側上眼瞼に電撃様疼痛を自覚した.眼科を受診したが異常はないと診断された.2日後に右側側頭部および顔面の疼痛を自覚し当科を受診した.当科初診時,右側前額部,右側側頭部,後頭部に電撃様の疼痛があり,頭部アロディニアを認めた.また,右側結膜充血,右側の流涙,前額部と鼻尖端部に膿疱様の発赤を認めた.MRI水平断で右側root entry zoneにおける脳動脈による三叉神経根の圧迫はみられなかった.血液検査でウイルス抗体価:CF(水痘・帯状疱疹)32と高値を認めたため,右側三叉神経第1枝の急性帯状疱疹と診断した.疼痛管理としてプレガバリンを25mg/日から開始し50mg/日まで増量した.プレガバリン投与開始から3か月で頭部および顔面の疼痛は消失したためプレガバリンは休薬した.
考察:三叉神経第1枝の急性帯状疱疹は非定型顔面痛,自律神経様症状が出現することがある.三叉神経痛第1枝,結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)と臨床症状が類似するため鑑別が困難である.
結論:自験例は多様な臨床症状を呈し診断に苦慮した.歯科医師は一次性頭痛,有痛性脳神経ニューロパチーとの鑑別に必要な臨床症状を理解し,有効な診察,検査を行う必要がある.