日本口腔顔面痛学会雑誌
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総説
痛みと心理「慢性痛患者の認知特性と治療介入」
土井 充
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2024 年 16 巻 1 号 p. 15-20

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抄録
慢性痛は患者本人の認知行動面が要因となり悪循環し,病態が複雑化し,難治性となっていることが多い.そのため認知行動療法を併用した治療介入はとても重要である.認知行動療法を効率的に行うには,まず治療者と患者間に信頼関係が構築されていることが必須である.そのためには患者の考えを受容し,支持的に傾聴していく必要がある.ストレスになる考えを適応的な別の考えに変容する技法を認知再構成法というが,これを行う際には,一方的に適応的な思考を提示するのではなく,質問を繰り返し行うなどして,患者自身が客観的に考え,別の考えの方がストレスも少ないと気付くことができるように工夫をする必要がある.
慢性痛の治療では,時間をかけて認知行動面にアプローチしていく必要がある.そのため,始めの治療のエンドポイントは,「治す」ではなく原因となる認知行動面も変容しつつ,痛みを上手に受容することにした方がストレスも少なく改善に向かう.患者,治療者との関係性についても,治療者は「認知行動的にも介入し,慢性痛と上手に付き合えるように支援する人」,患者は「医療者の支援も受けるがセルフケアも行う人」となり,ともに慢性痛と上手に付き合う生活を目標にしていくことが望ましい.
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