日本口腔顔面痛学会雑誌
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総説
歯科における痛覚変調性疼痛
~特発性口腔顔面痛と三環系抗うつ薬を用いた薬物療法について~
井川 雅子
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2024 年 16 巻 1 号 p. 41-50

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抄録
歯科領域における痛覚変調性疼痛の機序が関与すると考えられる疾患には,「国際口腔顔面痛分類 第1版(International Classification of Orofacial Pain, 1st edition:ICOP-1)に「特発性口腔顔面痛」として分類されている,口腔灼熱痛症候群(Burning mouth syndrome:BMS),持続性特発性顔面痛(Persistent idiopathic facial pain:PIFP),持続性特発性歯痛(Persistent idiopathic dentoalveolar pain:PIDAP)の3つがあげられる.
いずれも従来は末梢の神経障害性疼痛であろうと考えられており,推奨される治療法も薬物の局所投与が多いが,効果は不明瞭であった.本稿では,これらの疾患の特徴と現在推奨されている治療法を,自験例に文献的考察を交えて解説し,さらに著者らが行っている三環系抗うつ薬を用いた薬物療法を紹介する.
著者らは第一選択としてアミトリプチリンを用いている.我々の195名(BMS/71名・PIDAP/124名)を対象とした症例蓄積研究では,BMS患者では約4か月で63.4%が,PIDAP患者では約4.5か月で63.7%がそれぞれ疼痛消失に至り,用いたアミトリプチリンの平均用量はそれぞれ59.2mgと78.9mg/日であった.アミトリプチリンが奏効しない場合も,同じ三環系抗うつ薬のクラス内で抗うつ薬を変更したり,新規抗精神病薬を追加投与することなどで,さらに治癒率をあげることができる.
著者らは,特発性口腔顔面痛疾患は抗うつ薬によく反応することから,早期に診断して治療を開始すれば,慢性化させずに治癒に導くことが可能だと考えている.
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© 2024 日本口腔顔面痛学会
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