日本口腔顔面痛学会雑誌
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総説
神経障害性疼痛に対するボツリヌス神経毒素の効果
小笹 佳奈滝澤 慧大田所 壯一朗岡田 明子篠崎 貴弘野間 昇
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2024 年 16 巻 1 号 p. 51-54

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抄録

典型的三叉神経痛の治療では,薬物療法や神経ブロック療法,外科治療などが行われる.これらの治療で第一選択となるのは薬物療法であり,カルバマゼピンであることは疑いの余地はない.しかしカルバマゼピンは副作用の発生頻度が高い薬物としても知られている.一方,神経障害性疼痛の病態に対する薬物治療は容易ではなく,安定した効果が得られていない.近年,ボツリヌス神経毒素治療は難治性三叉神経痛,神経障害性疼痛に効果があると報告されるようになった.ボツリヌス神経毒素の三叉神経痛,神経障害性疼痛に関するメタアナリシスでは試験の要項性指標の鎮痛効果が確認された痛みスコア(visual analogue scale, numeric rating scale, neuropathy pain scale)の改善があり,有害事象が少なく,一定の有効性が認められている.一方,試験によっては,ボツリヌス神経毒素の投与量,投与方法が異なり,発作頻度や疼痛強度など試験毎に様々な指標が用いられているため評価の一貫性がない.従って,三叉神経痛においてはカルバマゼピンに抵抗性がある場合に追加療法として位置付けされているが,効果が様々であるため今後さらなる研究が望まれる.本総説では,臨床研究を基に三叉神経痛,神経障害性疼痛に対するボツリヌス神経毒素の有効性について解説する.

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