日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
口腔顔面痛を4年間訴え続けていた帯状疱疹後神経痛の1例
伊藤 幹子佐藤 曾士徳倉 達也
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2024 年 16 巻 1 号 p. 59-63

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抄録

症例の概要:70歳代前半女性が当リエゾン外来初診約4年前,下顎左側臼歯部に夜も眠れない激痛を自覚し,かかりつけ歯科医院で下顎左側第二小臼歯5根尖性歯周炎と診断された.疼痛は1週間程で消失したが,1か月後,同部に鈍痛としびれ感を自覚した.20年前に治療を受けた5の根管充填剤除去と根管治療を受けたが疼痛は軽減しなかった.患者は4年間で10か所の歯科医療機関を転々とした後,当外来を紹介受診した.4年前の患者の日記から帯状疱疹後神経痛の診断にいたった.合併症を考慮しノイロトロピンを4か月間処方したところ,痛みはほぼ消失した.
考察:帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹の治癒後に生じる持続性神経障害性疼痛である.帯状疱疹で三叉神経第Ⅱ・Ⅲ枝領域に歯痛が生じた場合,激痛を訴えるが1週間程で収束すること,歯痛の数日後,同じ神経支配領域に小水疱が出現するが無疱疹性のこともあることなどにより診断の難しさが指摘されている.本症例は,患者の日記より明らかになった,歯痛が夜も眠れない激痛として始まり,いったん収束,1か月後,病態の異なる神経障害性疼痛として現れたことが診断上のポイントとなった.
結論:帯状疱疹が原因と考えられる歯痛と診断されないまま帯状疱疹後神経痛を発症し,口腔顔面痛を4年間訴え続けていた高齢女性を経験した.帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛による口腔顔面痛の診断の難しさを再認識する必要がある.

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