2024 年 16 巻 1 号 p. 55-58
症例の概要:84歳男性.1か月前から右側下顎,右側舌縁部から舌根部の自発痛を自覚した.徐々に疼痛の範囲が広くなり,疼痛による開口障害,摂食困難を伴うようになったため,精査加療目的で当科を紹介受診した.舌根部へのリドカインスプレー噴霧で疼痛が軽減したため,舌咽神経痛と診断した.疼痛コントロールのため低濃度局所麻酔薬による舌咽神経ブロックを施行したところ疼痛は軽快した.初回ブロックの鎮痛効果は一時的であったが,その後の複数回のブロックでは鎮痛効果が持続し,5回目のブロック以降は疼痛が消失したため神経ブロック療法を終了した.
考察:舌咽神経末梢枝への低濃度局所麻酔薬によるブロックは,末梢からの触刺激を一定時間遮断することによりエファプス伝達やニューロンの易興奮性を鎮静化させたり,自然な不応期に導いたりする効果があり,鎮痛効果が持続する可能性がある.
結論:舌咽神経痛の疼痛コントロール方法として低濃度局所麻酔薬による舌咽神経ブロックが有用である可能性が示唆された.