作業科学研究
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第21回作業科学セミナー基調講演
作業を基盤としたソーシャル・インクルージョンの視点:地域や社会における集合体としての作業
カンターズィス サラ
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2018 年 12 巻 1 号 p. 14-37

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抄録
歴史的,社会的,文化的,経済的状態を含めた我々の社会的世界の構築は,一部の人々を不公正な立場に,つまり家族や地域社会で営まれる日常生活に対して完全な参加から排除する立場に置いてきた.「ソーシャル・インクルージョン(訳注:社会的包含,社会的包摂と訳されることがある)」という用語は,社会を変革し,「すべての人のための社会」を再構築するために実践するプロセスを意味する.しかし,これは複雑で多層的なプロセスであり,すべての人による変化を必要とする.この中では政策と経済の変化が不可欠ではあるが,地元の社会世界,近隣とコミュニティの公共の世界における変化が重要であることもわかっている.私は本日の講演で,集合体としての作業と私たちが行ってきた集合体としての作業に関する研究と実践がこれらプロセスの重要な部分であることを提案したい. まずソーシャル・インクルージョンの概説,次に集合体としての作業の概念,そしてインクルージョンと排除両方の状況を含む地域社会の構築と維持に対する集合体としての作業の貢献について述べる.その後,日本とヨーロッパの例を含めて,ソーシャル・インクルージョンを支える集合体としての作業がどのように発展するかを議論することを目指す.この発展に関して不可欠な部分は,公共世界の重要性についての理解,認識,参加市民権の概念の理解である.我々の地元地域やコミュニティにおいて集合体としての作業を通してすべてのソーシャル・インクルージョンが可能となれば,今日の社会において多くの人々が直面する生活上の不公正な状態に対処するために必要な社会変革の一助となるだろう.
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© 2018 日本作業科学研究会
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