抄録
近年の作業科学研究では,主にインタビューを行って人々の作業の経験や意味を明らかにする. しかし,作業の複雑さを説明する知識を構築するためにも,状況の中で展開している作業を捉える新しい視点が必要である. 本稿の目的は,日常生活や治療的な状況の中で作業がどのように展開しているかを理解するための視点として AlsakerとJosephssonが開発したNarrative-in-Action(行為の中のナラティブ)を紹介することである.
最初にNarrative-in-Actionの理論基盤を説明した後,この視点の意義を示すために著者らの研究から2つの例を紹介する. これらの例でこの視点が,個人が気付いておらず語ることもなかった作業の意味を明らかにするのに有用であることを示す.
Narrative-in-Action は,人々の作業が生活の質や健康,ウェルビーングをどのように促すかを理解するための新たな視点を切り開くものである.