2020 年 14 巻 1 号 p. 31-40
障害児の母親たちが子どもとの生活をどのように経験し,どのように社会に参加するのかを理解するために,母親の手記,インタビュー,参加観察からデータを収集した.Blumerのシンボリック相互作用論 (Blumer, 1991)を基盤にした interaction の視点でナラティブ分析した.母親たちは子どもとの生活が始まると,社会からの孤立を経験したが,移行期を経て,社会に参加し,さらには社会を変えようとしていたことが理解された.この過程には母親たちの以下の作業が含まれていた.母親たちは,障害児の母親仲間との交流を通して安心感,肯定感を得て,障害児との生活に関する情報を交換し,外出の機会を獲得すること,社会に対し障害のある子どもとの経験や生きる姿勢を表明すること,さらに,社会の人々と自分の子育てを共有することであった.母親たちの作業は,子どもとの将来のために社会を変革するための,主体的社会参加(activism)であると理解された.