抄録
「自然と作業は相互に関連し合い,作業療法として治療効果をもちうる」.これは登山ガイドである私自身の,作業療法士の治療を受けるため病院で,そして自主トレーニングとして自然の中で行った 4 ヶ月半にわたるリハビリテーションに基づく実感である.作業療法士は施術だけでなく,なぜ良くなりたいのかを問い続け,自分自身も山で複合的に体を動かし,美しい自然に心を動かされ,痛みを忘れて楽しく自主的なリハビリに取り組んだ.もっと良くなろうと病院に積極的に通い,作業療法士はそれを励ます.この連鎖のサイクルは,私の想像を超えて患者に寄り添うものであり治療を前向きにした.この経験を「作業療法の自然を生かした治療的介入」という課題設定のもと,メカニズムや方法論として整理して社会に役立てたい.
作業療法が,治療手段として“どんな作業が,その人の治療になるかを探すところから始まる”のであれば,これは作業療法士と登山やハイキングという自然活動に習熟した登山ガイドとの協働によってこそ進めうる,新しい試みとなるだろう.