薬剤疫学
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企画/リスク最小化策の評価
4.サリドマイド等のリスク最小化策の評価
中島 研
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2017 年 22 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

妊娠中の薬剤の使用については,児へのリスクが懸念される.このため薬剤のリスク管理は非常に重要である.本邦でもかつてサリドマイドによる薬害を経験しており,臨床の現場では使用されなくなった.しかしながら,多発性骨髄腫への治療効果が明らかとなり,その管理が問題となった.実際には使用する患者の中には妊娠可能女性は少なく,管理を厳しくするあまり,妊娠とは関係のない患者でも使用しにくくなることの問題も懸念された.イソトレチノインはざ瘡の治療薬として米国で使用されている.本邦では適応はないが,輸入して使用されている現状がある.使用する患者の中には妊娠可能な女性も多数含まれるため,厳格な管理が必要である.本邦での管理は適応が取れていないことから,情報の提供が十分ではない.バルプロ酸はてんかんの他に片頭痛の予防という適応を併せ持っている.てんかんのコントロールは非常に重要であり,児への影響のリスクを伴うものの妊娠中にもリスクベネフィットを考慮し,使用が必須となる例もある.一方,片頭痛の予防については,ベネフィットが比較的小さく,米国 FDA ではこの目的のための妊娠中の使用を禁止した.本邦ではどの適応でも原則禁忌となっており,リスクベネフィットのバランスが明確ではない.今後は適応ごとの注意喚起も併せて行うことが重要と考えられた.

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© 2017 日本薬剤疫学会
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