薬剤疫学
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企画/我が国における新しい real world data 活用の潮流
3 .徳洲会メディカルデータベースの利活用
岩上 将夫
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2022 年 27 巻 1 号 p. 19-24

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抄録

徳洲会グループは日本において最大規模の病院グループであり,グループ全病院をネットワークで接続することにより,情報の一元管理・コード統一化が実現できている.これまで徳洲会グループは治験事業への参加,抗がん剤プロトコールシステムの構築,BioBank Japan への参加,MID-NET® へのデータ提供などの形でデータ利活用を行ってきたが,最近は「徳洲会メディカルデータベース (Tokushukai Medical Database)」としてアカデミアや製薬企業・医療機器メーカーに対するデータ提供も開始している.徳洲会メディカルデータベースは主に,入院・外来レセプト情報,Diagnosis Procedure Combination(DPC)データ,血液検査結果およびバイタルサインを含む電子カルテ情報,院内がん登録情報から成る.徳洲会メディカルデータベースの強みとしては,血液検査結果および入院中のバイタルサインの情報が電子化・統一化された形で取得できる点,徳洲会メディカルデータベースに存在するレセプト情報やDPC データから(徳洲会本部や倫理委員会の許可のもと)各患者の電子カルテにさかのぼれる点,などが挙げられる.これらの強みを活かして,採血結果により定義した急性腎障害の研究,透析患者の高カリウム血症の研究,関節リウマチ同定のためのバリデーション研究などの事例が認められる.データ利活用の中で新たに課題として挙げられた点(例えば,心臓エコーのデータが各病院から統一化した形で得られない点)については,ネットワークシステムのアップデートと共に解決し,今後より幅広い研究課題に対応できることが期待される.

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