抄録
発育に伴って運動能力の構造がいかなる変化をするかということは,発育発達の著しい中学生の体育指導に於て重要な問題である.そこでスポーツテスト及び体格17項目の測定結果を資料として,女子約160名,男子約210名の中学在学3ヶ年間における運動能力の因子構造の変化を同一標本によって追跡し,その結果を女子を中心に考察した.運動能力因子として各学年5個ずつ抽出されたが,そのうち各学年共通因子は「瞬発筋力及び身体協調能力」と「長軸の発達」であった.このうち前者はここでとりあげた運動能力の中では発育と共にその分散量が増加し,後者は次等に減少した.また,運動能力別のcommunalityの変化では,「体格」,「静的筋力」,「柔軟性」等を表わすテスト変数群のcommunalityが発育と共に減少し,「瞬発能力及び身体協調能力」を表わすテスト変数群のcommunalityは増加して,次第に他の運動能力との関係を深めて行く傾向がみられた.