1973 年 17 巻 4 号 p. 171-177
この小論は最近の体育学研究における1つの重要な問題である分化(differentiation)と統合(integration)の問題を具体的事例をあげて考察したものである. 第1に体育学の対象である人間を哲学上の学問分類論から論じ, 学問的操作によって自然存在となる場合と行為の主体としての人間存在となる場合の区別を明らかにした. 第2に具体的事例として脛骨中央部横断面の尖鋭角が新石器時代から現代にかけて男子の場合その鋭角が鈍化する傾向を人類学的知見から考察し, 現代人のそれを超音波法によって計測すると運動能力の高いものの方が普通のものよりその尖鋭角がせまく, 脛骨が扁平性を示すという新事実をとらえた. 最後にこのような事実から, 自然科学的研究を体育に生かすために人文社会科学と結合することの必要を論じ, 統合問題の解決の方向を明らかにした.