日本農薬学会誌
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殺菌剤ベノミル水和剤の樹幹注入によるナラ類集団枯損被害に対する予防効果
斉藤 正一中村 人史岡田 充弘本間 航介
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2014 年 39 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

ナラ枯れの新たな予防法を開発するために,殺菌剤ベノミル水和剤の水希釈液を健全なミズナラに樹幹注入処理する試験を行った.ベノミル水和剤500倍希釈液を樹幹注入処理した供試木すべてにRaffaelea quercivora(ナラ菌)を多点接種したところ,その立木は枯死せず,辺材部からのナラ菌の分離率も対照に比べて低かった.一方,無処理の健全木への多点接種では試験木は枯死し,ナラ菌の分離率が高かった.また,3県8試験地の14の試験でベノミル500倍液の樹幹注入処理による枯損予防効果を試験した.処理区は無処理区に対して常に低い枯死率であった.処理区と無処理区の枯死率に有意差は認められなかったが,14の試験すべてで注入当年から3年後の枯死率がベノミル区で無処理区に対して低かったことから,被害が発生する現実林分において,ベノミル500倍液の樹幹注入処理による枯損防止効果が高いことが示唆された.

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