日本農薬学会誌
Online ISSN : 2187-8692
Print ISSN : 2187-0365
ISSN-L : 2187-0365
技術資料
ワルファリンの毒性試験の概要II
深谷 伸夫山﨑 一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 46 巻 2 号 p. 63-66

詳細
抄録

1993年に日本農薬学会誌に発表した急性毒性,眼刺激性,皮膚刺激性,皮膚感作性,復帰変異原性の試験結果に加えて安全性評価のために各種毒性試験を実施した.皮膚感作性については,非感作性物質と考えられた.コイに対する急性毒性の96時間LC50は>100 mg/L,最大無影響濃度も100 mg/Lであった.ミジンコに対する急性毒性試験の48時間EC50は33 mg/Lで,最大無影響濃度は18 mg/Lであった.藻類生長阻害試験のEbC50(72時間)は15 mg/L, ErC50(0–72時間)値は34 mg/L,最大無影響濃度は6.47 mg/Lであった.

ワルファリンはカリウム・ナトリウム等の塩にならない限り水に溶けにくい化合物であり,その飽和濃度は17 mg/L3)とされている.今回の試験は,ワルファリンが微アルカリ性とカルシウムの存在で溶けやすくなるという知見により,53.7または100 mg/Lで溶解した試験濃度液を最高濃度として評価した.試験結果によれば,ワルファリンはコイへの影響は少ないが藻類の生長には影響がある.ミジンコには水への飽和濃度であれば影響はないが,微アルカリ性とカルシウムの存在でより多量に溶解すると影響がでる恐れがあり,環境への流出に注意する必要がある.自然環境においてワルファリンがどこまで溶解するかについては不明であるが,化合物の溶解については様々な条件を考慮する事が重要になると思われる.

著者関連情報
© 2021 日本農薬学会
前の記事 次の記事
feedback
Top