抄録
小児の急性白血病の治療成績は多剤併用による寛解導入, 強化, 維持療法の工夫ならびに中枢神経白血病に対する予防療法の普及により, 特に急性リンパ性白血病 (ALL) については著しい進歩がみられるようになった.1970年施行の小児の急性白血病患児の実態調査では, 5年以上の長期生存例者はわずか35例をみるにすぎなかった.現在, 小児のALLに限れば, その約2/3は治癒し得るようになっている.治療成績の向上とともに, 治癒したものに何らかの後遺症がありはしないかという問題が惹起されるようになった.白血病治療に伴う障害として, 発達・成長の障害, 中枢神経の障害, その他視床下部下垂体, 甲状腺, 性腺, 骨, 心臓, 肝臓, 膵臓, 腎臓などの機能障害の発症ならびに社会的問題が認められている。ここでは小児の急性白血病の長期生存例に認められる晩期障害について文献的考察と自験例をとおした若干の見解を述べる.