日本小児血液学会雑誌
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化学療法後に複合型免疫不全症を発症した t (X;11) (q13;q23) を伴う乳児急性単球性白血病の1例
矢崎 信飯田 真介松林 正尾坂 行雄大野 敏行山田 薫安藤 光広瀬戸 加大和田 義郎
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1996 年 10 巻 3 号 p. 199-204

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抄録

入院時の染色体の検査ではt (6;19) (q21;pl3) のみにみえたが分子生物学的手法により, 11q23がXq13に転座していることがわかった乳児急性単球性白血病を経験した.乳児白血病では染色体の検査で11q23の異常がなくても分子生物学的手法により11q23の転座の有無を調べる必要があると考えられる.この患者はVP-16, CA, DNR, MIT, PSLを含んだ化学療法により生後1カ月から11カ月治療され, その後複合型免疫不全症を発症した.治療終了後1年目のTリンパ球は著明に減少し血清の免疫グロブリンも減少していた.リンパ球の幼若化反応は非常に低く, NK活性も低かった.患者にrIL-2を投与したところ, CD2+CD3+リンパ球が増加し血清免疫グロブリンも増加した.この症例は乳児白血病を治療するときには化学療法によって免疫不全症を起こす可能性があることを考慮する必要があることを示唆している.

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